この絵本の内容紹介
自分勝手でわがままで、それでいて物凄く強くて恐ろしいティラノサウルスが暮らしていました。
そんなティラノサウルスに近づく恐竜は誰もいません。ティラノサウルスが視界に入ると誰もが逃げ出しました。
「ヒヒヒ なんで おれさまを みて にげだしたんだ?」
ある日のこと、ティラノサウルスはテスケロサウルスを捕まえました。
仲間達はテスケロサウルスを助けようとしますが、自分勝手でやりたい放題のティラノサウルスはお構い無し。自分さえ楽しくて面白ければいいという身勝手な考えのティラノサウルスにとって、友達を助けようと必死なテスケロサウルスの仲間達のことが理解できません。
そんなティラノサウルスを誰も愛してくれませんでした。
静かな夜のこと、ティラノサウルスは岩に寄りかかって眠りに就こうとしていました。寄りかかった岩はひんやりと冷たく、身震いするほどです。空に輝く星々もなんだか寒そう。
そんな夜にティラノサウルスはポツリと呟きました。
「ともだちか・・・・・・。おれは ひとりぼっちだ。さ、さみしい」
すると、「わたしも・・・・・・」と岩に空いた小さな穴から悲しそうな声が聞こえました。ティラノサウルスが穴を覗き込むと、そこにいたのはパウパウサウルスでした。
ティラノサウルスにとっては、ご馳走のパウパウサウルス。思わず大きな口を開けて食べてしまおうとするのですが・・・。
「わたしたち にてるね。そっくりね。エヘヘ・・・・・。」
パウパウサウルスがそう言って笑うと、ティラノサウルスは驚きを隠せません。 パウパウサウルスと自分を見比べますが、何が似ているのか全く分かりませんでした。
強くて恐ろしいはずのティラノサウルスに、弱虫で泣き虫なところが似ているのだとパウパウサウルスは言います。
パウパウサウルスは、目が見えないのでティラノサウルスの正体に気づいていないのです。目の前にいるティラノサウルスのことをトリケラトプスやマイアサウラだと思い込んでおり、いっそのことティラノサウルスに食べられてしまいたいと願っていました。
目も見えないし、弱虫だし、恐がりだし、さらには友達もいない……。役立たずなので生まれてこなければ良かったとパウパウサウルスは泣きながら言うのでした。
すると、それを聞いたティラノサウルスは……。
正反対であるはずのパウパウサウルスとティラノサウルス。ひょんな出会いが思わぬ変化を生み出します。
この絵本は、誰かを思いやること、誰かのために生きることの大切さを描きます。誰かと支え合いながら生きることは、こんなにも温かいことなのだとじんわり感じることでしょう。