この絵本の内容紹介
大昔のこと、マイアサウラのお母さんは嵐の過ぎた朝に林の中で小さな卵を見つけました。
「かわいそうに、もし あの おそろしい ティラノサウルスにでも みつかったら、たべられてしまう」
優しいマイアサウラのお母さんは卵を家に持ち帰ることにしました。
そして、自分の産んだ卵と林で拾った卵を分け隔てなく優しく撫でて、大事に大事に抱きしめるのでした。
それから何日か過ぎ、マイアサウラのお母さんが赤い実を取って帰ってきたところ、二つの卵から赤ちゃんが産まれました。
ところが、林で拾った卵から産まれたのはティラノサウルスの赤ちゃんだったのです。マイアサウラのお母さんはどうしたら良いかと悩みます。
後々になって自分がマイアサウラではなくティラノサウルスだと分かったら大変なことになってしまう……。そう考えたマイアサウラのお母さんは、その夜、ティラノサウルスの赤ちゃんをそっと抱き上げ出かけることにしました。
マイアサウラのお母さんが向かったのは、卵を拾った林です。後ろ髪を引かれる思いでスヤスヤ眠るティラノサウルスの赤ちゃんを林に置いて帰ることにしたのです。
ティラノサウルスの赤ちゃんに謝りながら胸がズキンズキンと痛むのを堪えて帰り始めたところ、「クー・・・・・・」と泣く声が聞こえました。その泣き声を聞いたマイアサウラのお母さんは、赤ちゃんのところに急いで戻り、泣きながら謝りながら抱きしめるのでした。
「たいせつな わたしの あかちゃん。にどと はなしたり しないわ」
マイアサウラのお母さんは、そう誓うと赤ちゃんを大事に抱き抱えて家に戻りました。
それから、マイアサウラの赤ちゃんもティラノサウルスの赤ちゃんも同じように大切に育てるマイアサウラのお母さん。いつもニコニコ明るいマイアサウラの赤ちゃんを「ライト」と名付け、強くて力持ちのティラノサウルスの赤ちゃんには優しい子に育ってほしいという願いを込めて「ハート」と名付けました。
そんなある日、ライトはアンキロサウルスのおじさんに遭遇します。そして、ティラノサウルスは爪が鋭くて牙がギザギザ、体がゴツゴツして恐ろしい存在であることを教えてもらうのでした。
「なんだか ハートみたいだね」
家に帰ってライトが冗談混じりに言うと、お母さんは恐い顔で怒りました。
ライトもハートもマイアサウラとして育てられるのでした。
月日が経ち、ライトもハートもお母さんと同じくらいに大きくなりました。
ある日、ハートが赤い実を取りに出かけていたところ、恐ろしいティラノサウルスに遭遇したのです。そして……。
マイアサウラとして育ったティラノサウルスのハート。恐ろしいティラノサウルスと遭遇したことで事態は急展開を迎えるのでした。
マイアサウラのお母さんとティラノサウルスのハートの関係はどうなるのでしょうか。切なくも温かい家族の絆を描いたお話です。