この絵本の内容紹介あらすじ

樹木、花、鳥、精霊、子ども……この10年、描いた作品に、見ることの楽しさ、生命のふしぎを伝える掌編をそえた、心が歓ぶ一冊。


『見えない蝶をさがして』は、画家・絵本作家 いせひでこが、この10年間、描きつないだ19枚の作品に、20の掌編をそえた書籍(えほん・エッセイ)です。

いせひでこは、2009年から、月刊俳句誌『岳(たけ)』の表紙画を半年に1枚ずつ、描き下ろしてきました。同誌の主宰、宮坂静生さんの《絵本のような表紙絵でいいのですよ》との言葉にはげまされて、2018年まで10年間続けてきました。樹木、森、花、どんぐり、鳥、蝶、精霊、地層、子どもなどが描かれていますが、どの作品にも、ちいさないのちへの慈しみや、四季折々の自然の息吹きが、いせひでこ独特のタッチで描かれています。

19枚の作品は、「大きな木のような人」「長い一日」2009年、「桜かくし」「古道」2010年、「まつり」「クヌギのあかちゃん」2011年、「水仙月」「ヤドリギ」2012年、「切り株」「陽だまり」2013年、「春の路」「聴く木よ」2014年、「ヤマザクラの灯」「五色鳥を待つ」2015年、「ひかりの子ども」「森の秘密」2016年、「46億年の時計」「緑蔭の部屋」2017年、「蝶の谷」2018年になります。

この10年間の、いせひでこの絵本や書籍『大きな木のような人』『あの路』『最初の質問』『チェロの木』『おさびし山のさくらの木』『幼い子は微笑む』『木のあかちゃんズ』『わたしの木、こころの木』『こぶしのなかの宇宙』などに通じる世界が展開します。そして、2011年の〈3.11〉以降は、自然やいのちに対して、さらに深く、こころとまなざしを注いだ創作となっています。

一冊にまとめるにあたって、作品それぞれと呼応しあうような掌編・エッセイ・ことばをそえました。〈地層〉〈プラタナス〉〈スミレの色〉〈切り株〉〈明るい森で〉〈終わらなかった夏休み〉〈人と木〉〈まつ〉〈獺祭書店〉〈数学者〉〈木片〉〈ジャングルジム〉〈2歳のあなたへ〉〈たぬき〉〈天の調べ〉〈根っこ〉〈如月〉〈ちいさきもの〉〈記憶〉〈見えるまで〉――。

絵とあわせて読んだり、お子さんやお孫さんとそれぞれの物語を読んだり、絵の細部を覗いたりと、いろいろ楽しんでいただけると思います。

また、ゆたかな作品世界をより広く味わっていただくため、タブローやスケッチを配しました(「森に春灯る(ウリハダカエデ)」「ブルターニュの樫の木」「ひかりのみち」「クロマツ(亘理吉田浜)」「残雪」「森の入り口」など)。

いせひでこは言います。

《切り株のうえの見えない木にも、むき出しの根っこにも、乳母車のなかの赤ん坊にも、物語は満ちている。》

――ちいさないのちを見つづけてきた、旅する絵描きのいまを、そして、見ることの楽しさ、生命のふしぎ、自然の奥深さを伝える、こころが歓ぶ一冊を、お楽しみ下さい。