この絵本の内容紹介
ごみ箱の横に落ちている輪ゴムを見つけた女の子。
その輪ゴムを拾って、お母さんに「ちょうだい!」とお願いしました。
すると、お母さんは「ああ。ドーゾ。」と一言。
「このわごむは、わたしのだ!!」
輪ゴムをもらった女の子は大喜び。お兄ちゃんのお下がりでもなく、みんなが仲良く使うものでもなく、ちょっとだけ貸してもらうものでもなく、自分だけの物が欲しかったのです。
自分の物なので自分の好きにしていい。
女の子は、その感動を静かに噛み締めます。そして、自分の物だと改めて実感して大喜び。
女の子は片時も輪ゴムを手放しません。お風呂に入るときも一緒、寝るときも一緒なのです。
大人になってもこの輪ゴムを大切に使おうと考え、女の子の想像は膨らみます。髪を結んだり、イヤリングとして耳から垂らしてみたり、大人になったらこの輪ゴムでお洒落をしようと妄想するのです。
これに止まらず女の子の妄想はまだまだ膨らみます。将来たくさんのラブレターをもらったらこの輪ゴムで束ねようと考えたり、世界中の悪い人をこの輪ゴムで捕まえようと考えたり。宇宙人がやって来たら、この輪ゴムで追い払って地球を救おうと考えてみたり……。
女の子にとって大事な大事な宝物になった輪ゴム。どんな高価なものを積まれたとしても、誰にも絶対に渡さないと心に固く誓います。ところが、もし、いつか運命の人が現れたら……その人の輪ゴムと繋げて遊ぶくらいなら許してあげようかなと女の子は考えるのでした。
女の子にとってはそれほど大切な宝物ですが、お兄ちゃんはきっと馬鹿にします。でも、お兄ちゃんの宝物だって、女の子が見たらサッパリ良さが分からないのです。
他人から見たら良さがサッパリ分からない物でも、その人にとっては何より大切な物があるものです。お隣ののりちゃんにとってはそれがキャップだったり、たっくんにとっては道で拾った輪っかだったり、おばあちゃんにとってはおじいちゃんからもらった時計だったり、お父さんにとっては昔の古いミニカーだったり。
女の子は輪ゴムで何が出来るだろうかと、どこまでもどこまでも際限なく妄想を膨らませます。ところが、女の子が輪ゴムをビヨーンと伸ばした矢先にプツン。この不吉な音とは……。
捨てられようとしていた輪ゴムから妄想が広がる、愉快で楽しいお話です。他人から見たらどうでもいい物から、これほどまでに夢が広がるのかと、ついつい感心してしまうことでしょう。
大人になると段々と薄れやすい感覚かもしれない、「わたしだけのもの」という女の子の喜びや感動が伝わります。そして、その喜びや感動が、じわりじわりと微笑ましく感じられます。