この絵本の内容紹介あらすじ

同じクラスの「あいつ」のことは、どうも好きじゃない。いつも威張ってて、乱暴で、自分勝手で……。「ぼく」は、運動が苦手で休み時間も教室で過ごす。「あいつ」は、いつも友達とグラウンドでドッジボールをして遊んでいる。そんな、まったくタイプの違う2人が、運動会でペアを組んで二人三脚をすることになって……。

小学生になると、少しずつ遊び方にも好き嫌いや得意・苦手が出てくるようになって、仲良くなるお友達のタイプも分れてきますよね。主人公のようにおとなしい男の子は、「あいつ」のようなボスタイプの子はどうしても近づきがたい存在のようです。一緒に遊んだこともない、まともに話したこともない「あいつ」とペアを組むなんて。大人でもその憂鬱な気持ち、とっても理解できますよね。

「ぼく」の予感通り、2人の二人三脚はまったくうまくいきません。練習では何回も転び、とうとうビリになってしまう始末。「あいつ」は自信満々にリードしようとするけれど、「ぼく」の気持ちと体が全然ついていかない。あいつと一緒じゃうまくいくはずがない。そんな状態のまま運動会前日を迎えてしまいます。

「あいつ」に呼び出され、最後の練習をすることに。やはり何度も転んでしまう2人。その時、グラウンドの隅で女の子の泣き声が。「あいつ」は急に駆け出し、「ぼく」もつられて足を出す。いつの間にか何も考えずに2人で地面を蹴っていて……。

「あいつ」の中にある優しい心に触れたとき、「ぼく」の中で何かが変わっていきます。2人の間にあった、見えない壁のようなものがすっと消えていくように。そして、迎えた運動会当日。二人三脚の緊迫した様子も力強く丁寧に描かれていて、とても見ごたえがあります。スポーツは勝ち負けだけじゃない、友情を深めるチャンスも与えてくれるんだなと改めて感じさせてくれるそんな1冊です。