この絵本の内容紹介あらすじ

「今もアフガニスタンの地で、
自分たちの権利を必死で守ろうとしている女性たちがいることを、
どうかわすれないでください」
――解説・清末愛砂
(室蘭工業大学大学院教授、アフガニスタンにおける女性人権問題研究家)

かわいそうに、まごむすめのナスリーンは、学校に行くことをきんじられ、両親をタリバンの兵士に連れていかれ、ひとことも口をきかなくなりました。
これはなんとかしてあげなければなりません。
そのころ、あるうわさを耳にしました。
家のそばの通りにある、みどり色の門。
そこには学校が……女の子のためのひみつの学校がある、と。

ナスリーンの心のまどをひらきたい―――おばあちゃんの願いと、勇気と、「ひみつの学校」が、小さな奇跡をよびおこす。
今から20年ほどまえのアフガニスタンで、ほんとうにあったおはなしです。

◇ ◇ ◇

アフガニスタンは、1970年代の終わりから、ソビエト連邦(ロシア)の軍事侵攻や内戦により、国内の混乱がつづきました。1996年には、イスラム教系グループ「タリバン」が政権をにぎり、女性だけの外出や、女の子が学校に行くことを禁止したりと、女性の権利を大きく制限するようになりました。2001年9月11日にアメリカ同時多発テロ事件が発生すると、その実行犯であるテロ組織「アルカイダ」をタリバンがかくまったため、アフガニスタンは米英軍からの軍事攻撃を受けることになります。同年タリバン政権は崩壊しますが、その後も国内の情勢は安定することなく、政府軍とタリバン、テロ組織「イスラム国」が対立し、民間人を巻きこむ爆弾テロが頻発する不安定な政情がつづくことになります。
女性の権利の侵害について、2001年のタリバン政権崩壊の後に改善されたのかというと、まったくそうはなっていません。もともと、アフガニスタンでは男性中心の考え方が強く、女性に対する暴力や、教育をいらないなどとする差別的な考えには根深いものがあり、タリバンだけが原因ではないからです。むしろ、国内情勢の混乱や治安の悪化により、女性の権利は、より制限されるようになったとさえ言われています。
2021年8月、タリバンがふたたびアフガニスタンの政権をにぎりました。新しい政権はこれから女性の権利を改善していくのか、まったく予断を許すことができず、世界が注視しています。
この物語は、前のタリバン政権時代(1996~2001年)に、本当にあったできごとです。政権が変わるなか、いつの時代にあっても、教育の大切さを知り、女の子に教育は必要であると、なんとか学校に行かせようと努力してきた女性たちがいました。そして、彼女たちの取り組みは、今もなおつづいています。
「かわいそうなアフガン女性」のことを知ってほしいのではなく、「勇気あるアフガン女性」のことを忘れないでほしい―――解説・清末愛砂さんの主張です。まさしくそれが、本作の出版意図であることを申し添えます。(編集部)

絵本「アフガニスタンのひみつの学校 ほんとうにあったおはなし」の一コマ
絵本「アフガニスタンのひみつの学校 ほんとうにあったおはなし」の一コマ2