この絵本の内容紹介
土星の裏側に人とロボットが一緒に暮らす星があります。
その星のあるところ、最新型ロボットのジップは自慢の翼を広げて街中を爽快に飛び回っていました。
あまりにもスピードを出して飛び回るのでジップが怪我をしないかと街の人々は心配です。ところが、ジップはお構いなしにモミの木の丘へもオルゴールタワーの頂上へもビュンビュン飛び回るのでした。
街中を無鉄砲に飛び回るジップですが、最近は必ず立ち寄る場所がありました。それは、湖の向こう岸にあるサンドイッチ博士の研究所。
研究所に立ち寄ったジップは、窓にへばりついて中の様子を覗きます。研究所の中では、旧型のお手伝いロボットのキャンディが博士の横にぴったりくっついてせっせと働いています。
食事の準備や掃除に洗濯、お留守番と忙しく働くキャンディ。そんなキャンディのことが気になって仕方がないジップは、研究所に立ち寄っては窓の外から様子を覗いていたのです。
冬が近づくと博士はクリスマスの準備で忙しくなり、外出する日が多くなってきました。そんなある日のこと、ジップは博士が留守の合間にそっと研究所の窓を開けるのでした。
それから、ジップは勇気を振り絞ってキャンディに話しかけます。ジップはキャンディを誘って外に行こうとするのでした。
ところが、キャンディは博士から外に出ることを禁止されています。可哀想なことにキャンディは、ヨナヨナの森の向こうのロボットタウンもカンパネラのオルゴールタワーの頂上も知らないのです。
しかし、それはジップにしてみればキャンディを外に連れ出す口実になります。ジップは自慢の翼を見せながら、この翼があれば行けないところはないのだとキャンディに力説するのでした。
すると、その翼を見たキャンディは、ジップが空を飛べることに感動した様子です。そんなキャンディの様子を見たジップは、空からしか見えない景色や知らないことをたくさん教えてあげると畳み掛けます。それから、キャンディの手を引いて背中に乗せると、半ば強引に外に連れ出すのでした。
ジップはキャンディを背中に乗せてロボットタウンの上空を爽快に飛び回ります。
キャンディにとっては見るもの全てが新鮮です。街の風景を見たのは初めて、エネルギースタンドやデパートを見たのも初めてだったのです。
それからというもの、博士が研究所を空けている隙を狙って、ジップはキャンディを連れ出しては楽しいひとときを過ごします。
ある日は丘の上にあるモミの木の前に行き、これはクリスマスツリーだとジップがキャンディに教えます。そして、ふたりはクリスマス・イブの夜に一緒にここに来ることを約束するのでした。
ところが、そんなふたりの楽しい日々は突然と終わりを迎えます。ある日を境にキャンディの記憶に障害が出始めたのです。キャンディは自分の足についたキャタピラーのことも分からなければ、お手伝いの意味もわからなくなってしまうのでした。
日に日に少しずつおかしくなっていくキャンディですが、一体どうなってしまうのでしょう。そして、ジップとキャンディが交わしたクリスマスの約束は一体どうなってしまうのでしょうか。
ジップは、キャンディを外に連れ出したことが原因でおかしくなったのだと考え、様々な後悔や苦悩を抱え込みます。そして、時間だけが無駄に過ぎていく毎日を過ごすのですが……。
お話の最後は、ジップの後悔や苦悩から一転、じわっと心が温まる感動が待っています。
「生きることは、背負うこと」
ジップの言葉に深い意味を感じさせられる、二体のロボットと博士の交流を描いたハートフルなクリスマスのお話です。極細のモノクロペン1本で描かれたイラストがきめ細やかで特徴的な絵本です。
「Zip&Candy」制作秘話
毎度お騒がせしておりますキングコング西野です。
僕が幼稚園の頃、弟が生まれ、母は弟に付きっきりでした。
幼稚園の送り迎えをしてくれたのは、僕の婆ちゃん。
帰り道は毎日手を繋いで、時々、母には内緒で駄菓子を買ってくれました。
僕は婆ちゃんのことが大好きでした。ホントに。婆ちゃんは晩年、アルツハイマー気味になり、病室を訪ねた僕と病院の先生の区別がつかないこともありました。
以前より小さくなった婆ちゃんを見て、「もう長くないかもな」と思いました。もしかしたら忘れてしまうかもしれないけれど、残された日は楽しく過ごしたくて、婆ちゃんをいろんなところに連れ出しました。
妻夫木聡君とインパルス堤下君と、僕の婆ちゃんとで合コンもしました(*^^*)
アルツハイマー気味だったのですが、そんなのおかまいなしで、妻夫木君とのコンパは死ぬまで覚えていました。
堤下君のことは翌日には忘れていました。
婆ちゃんはイケメが好きなのです。『Zip&Candy ~ロボットたちのクリスマス~』には、そんな婆ちゃんとの最後の思い出を描きました。
出典:Zip&Candy/キングコング 西野 公式ブログ
個人的な作品で申し訳ないですが、それでも皆様の心に届くと嬉しいです。