この絵本の内容紹介
北海に浮かぶ小さな島チロヌップ。きつねたちと人々の暮らしを、やがて戦争が…。
平和への祈りを込めて描かれた不朽の名作
3人の漁師が、野生の子ぎつねと仲良くなりました。しかし、やがて戦争が、その触れ合いの日々を奪い、懸命に生きるきつねの親子を悲しい運命に追い込んでゆきます。ほろびゆく自然、ほろびゆく動物たちへの悲しみをこめ描かれた絵本。戦争がもたらす悲しみを、美しく繊細なイラストで丁寧に描いています。
■□■作者・たかはし ひろゆきさんからのメッセージ■□■
わたしは、戦争中、千島の無人島ですごしました。その体験をもとに、『チロヌップのきつね』という絵本をかきましたが、こんどは戦後の千島に思いをはせ、再びきつねたちに材をとって、この物語を創作しました。
太平洋戦争は、昭和20年8月15日に終わりましたが、その直前、日本とは戦争をしないという約束をしていたソ連(現ロシア)が樺太(サハリン)に侵入してきました。そして、終戦直後には、千島列島に、続いて、北海道の東につらなる4つの島=歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島にも進駐しました。北方四島とよばれるこれらの島は、いうまでもなく日本固有の領土です。それなのに、今も、わたしたち日本人は、これらの島に、わたることさえも許されません。軍事基地となってしまった4つの島のニュースを聞くにつけ、きつねや、野生の馬が走りまわっていた、平和な島を思わずにはいられません。
きつねと漁師たちの悲しみは、わたしの悲しみであり、怒りです。
(チロヌップは、アイヌ語で「きつね」という意味です。)