この絵本の内容紹介あらすじ

秋も終わりを迎えようとしたころ、ゴリラが丘の上にパン屋さんを開きました。

「コッ コッ コッ コッ いい におい!」

さっそくやって来たのは、三匹のニワトリです。

ちょうどそのころ、ゴリラはかまどを覗いて、パンの焼き具合を確認していました。それなので、ニワトリが来たのに遅れて気づき、慌てて「へーい、いらっしゃい!」と大きな声を出してしまいます。

ニワトリ達はその大きな声に驚いて、パンも買わずに逃げ出しました。

「あれれっ。どうしたのかな。ちゃんと みせばんを して いないと だめなんだな、きっと」

ゴリラはがっかりしながらそう考えていると、今度はヒツジがやって来ました。そこで、ゴリラは先ほどの反省を活かして「いらっしゃい!」と落ち着いて声を掛けます。

ところが、ヒツジはゴリラの顔を見るや否や、パンも買わずに慌てて逃げ出しました。

絵本「ゴリラのパンやさん」の一コマ

「ちょっと あいそが たりなかったんだな、きっと」

今度はタヌキがやって来ると、ゴリラはその反省を活かして、ニッコリ笑顔で「いらっしゃーい!」と声を掛けました。

ところが、ゴリラの大きな歯に驚いて、タヌキまでもパンを買わずに逃げ出してしまうのでした。

「うーん、こまった、どうしよう。これじゃ パンが うれないよ」

その夜、ゴリラは一つも売れなかったパンを食べながら、あれやこれやと考えました。そして翌日、子ウサギ達がやって来ても、ゴリラはカウンターから姿を見せませんでした。その代わり、指人形を使って応対しました。

すると、子ウサギ達は喜びながら、チョコパンやアンパンやドーナッツ、クリームパンを注文してくれたのです。

ところが、それでもゴリラの試行錯誤はやっぱり上手くいきません。そこに威張りん坊のキツネがやって来て、子ウサギ達に悪さをすると、ゴリラは「こらあ!」と顔を出して怒ってしまい……。

さて、そのゴリラの姿を見た子ウサギ達の反応とは。


人は、外見や経歴などで相手を評価してしまいがちです。そして、異質な存在を警戒したり、疑ってしまいます。

著者の白井 三香子氏は、この絵本をとおして「心の目をなくさないで……」と語りかけます。そのメッセージに、子どもはもちろん、大人であっても省みることがあるのではないでしょうか。