この絵本の内容紹介あらすじ

信心深い少年ヘンリー・クランプの一生を描いた絵本です。

ヘンリー・クランプが三才になったころ、自分が邪(よこしま)であるにも関わらず、神様に愛されていることを知ります。

それ以来、多くの聖句や聖歌を覚えて唱えるなど信心深い生活を送るようになります。

ある日、空を飛ぶカモメを指差し、自分が死んだらあのカモメのように天に昇るんだと妹のファニー・イライザに話します。ヘンリー・クランプは神様に愛されるようにと善良な行いを心がけます。時には邪な考えに流されることもありましたが、罪を心から悔い改めるのでした。

貧しい人が邪神にひれ伏さないようにとおやつを我慢しては小銭を恵み、両親を気遣ってお手伝いを毎日申し出ます。日曜日のある日に氷の上を滑る男の子たちを見かけたときは安息日を無為に過ごしてはいけないと嗜めることもありました。

ヘンリー・クランプは四才になったある冬のこと、貧しい未亡人のもとへパンプティングを届けに出かけます。帰り道に大粒の雹に見舞われたヘンリー・クランプは、命に関わる病にかかってしまうのでした。

日に日に弱っていくヘンリー・クランプですが、自分は神様に愛されていることを信じ、幸せのうちに命を引き取るのでした。

信仰心の深い善良な少年が若くして命を失ってしまうという展開を受け入れられない人もいるでしょうし、逆に幸せのうちに命を引き取ったヘンリー・クランプを賛美する人もいることでしょう。

信仰心とは何か、宗教とは何かといったことを問いかけるようなお話です。両親にお手伝いを申し出る場面でヘンリー・クランプは金づちを手にしていることから、神様のためなら何でもしてしまうのではないかといった行き過ぎた信仰心を揶揄するような表現も含まれています。

エドワード・ゴーリーの作品は、子どもがあからさまに不幸な運命を辿るものが多いですが、今回の作品は必ずしも不幸であったとは言い難いお話です。幸せとは何か?不幸とは何か?そういった疑問を読者に投げかけるような言外の余情が残る作品です。