この絵本の内容紹介
エドワード・ゴーリーならではの独特なカルトアートな絵本です。ABCの順にA〜Zまでがページをめくるたびに登場するアルファベット絵本です。
「Aはエイミー かいだんおちた」
「Bはベイジル くまにやられた」
「Cはクララ やつれおとろえ」
それぞれのアルファベットの頭文字から始まる名前の子どもたちの不幸な運命が描かれた大人向けの絵本です。
モノクロームの不気味でリアルなペン画と歯切れがよくも恐ろしい短文によって描かれた絵本。自分と同じアルファベットを頭文字に持った子どもは、どんな恐ろしい運命を辿ったのかなと興味を持つ人も多いようです。
「Kはケイト まさかりぐさり」といった具合に残酷な表現ばかりですが、淡々と表現されたブラックユーモアの独特な世界観に嵌まっていく人も多いのではないでしょうか。
読み始めは何か間違った絵本を読んでいるような、こんな絵本ってアリなの?といった気持ちになりますが、気づけば最後まで読んでしまっている、そんな独特な世界観に引き込まれること間違いなしです。
人は誰しも少なからずダークな側面を内包していることでしょう。そのダークな側面をくすぐるような奇妙な魅力が特徴。まるでミステリー小説でも読んでいるような感覚に陥ることから高い評価を得ている作品です。
教訓や道徳観を織り込まない純粋なブラックユーモアだからこそ頭を空っぽにして単純にこの絵本の奇妙な世界観に魅了されるのでしょう。
エドワード・ゴーリーと言えば韻を踏んだ短文が特徴ですが、柴田 元幸さんによってリズミカルに表現された翻訳に不謹慎ながら声に出して読みたくなってしまうのではないでしょうか。
それぞれの子どもたちに不幸が突然に襲いかかる描写の作品ですが、そこに悪意を感じさせないのがエドワード・ゴーリーの最大の魅力なのでしょう。
お子さんには決しておすすめできる作品ではありませんが、大人がミステリー小説を読むような感覚で楽しめる絵本です。