この絵本の内容紹介
リクが天国へと旅立ちました。
ぼくは息ができなくなるほど泣きながら、何度も何度もリクの名前を呼びましたが、起き上がることはありません。
すごく痩せ細って少し冷たくなったリクを、ぼくは膝の上に抱えながら、ふたりで過ごした楽しくて苦しかった毎日を思い出しました。
ぼくの家には4匹の犬がいました。名前はツトム・ヨースケ・マルちゃん・パグゾウ。ぼくは、その4匹の犬達と兄弟のように暮らしていました。
ぼくが5歳のころ、お父さんが小さな子犬を家に連れて帰ってきました。その犬は体が弱くて痩せっぽっち。
「このこの びょうきを なおそう」
お父さんがぼくにそう言いました。
「このこは よわくない! このこなら がんばれる」
ぼくはそう信じました。
そして、ぼくはその子犬に「リク」という名前をつけて、5番目の弟にしました。
リクは慣れない環境に不安だったのでしょうか。庭にある大きな木に顔を向けたまま、ぶるぶると震え続けました。
ところが夜、眠るころにはリクの震えは収まりました。4匹の他の兄弟と一緒になって、同じベッドで団子のようになって眠ったリクは、お兄ちゃん達の温かさに安心したのでしょう。
一方、ぼくはリクの病気が治って元気になる夢を見ながら、いつの間にやら眠っていました。
翌朝、ぼくはいつものように兄弟達を散歩に連れて行こうとしますが、リクは座ったままで石のように動きません。リクは外の世界を怖がっているようでした。
ぼくは「リクも たのしくげんきに さんぽが できたらいいのにな。」と考えながら、動かないリクを引っ張りながら少しずつ前に進みました。
それからも毎朝、みんなで散歩をしましたが、リクは自分から歩き出そうとはしませんでした。少しだけ歩けるようになっても、震えながら外の世界を怖がっているようでした。家でも食べ物を食べられない日がときどきありました。
それでも、リクが家に来て一年ほど経ったころには少しずつ元気になっているように感じられました。ぼくが幼稚園から帰ると、リクは玄関まで迎えに来て体を摺り寄せながら「クン」と小さく鳴きました。
夏休み、家族みんなで海へ旅行に出かけたとき、砂浜で散歩をしました。ヨースケとマルちゃんは、跳びはねて走っています。パグゾウは、日陰ですやすやとお昼寝。ツトムは、おもちゃを口にくわえて楽しそうに砂浜を歩き回ります。
あれほど散歩嫌いだったリクもこの日は別です。マルちゃんにくっついて、ゆっくりですがいつもよりはたくさん歩きました。
少しずつ少しずつ元気になっているように感じられたリク。ところが、また元気を失っていきました。ご飯も以前に増して食べられないほどです。
ある日のこと、ぼくが幼稚園から家に帰ってもリクは玄関まで迎えに来ませんでした。リクは病院に入院することになったのです。
ぼくはリクが元気になることを信じていましたが、それでもやっぱり不安は募ります。
一週間後、リクが退院して帰ってきました。ところが、リクはとても弱々しい姿。ぼくはその姿を見て、涙が止まりませんでした。
その日の夜、お父さんが言いました。
「リクは もうすぐてんごくにいくんだよ。リクは いのちのよろこびと こわさを おしえてくれたね」
少年と子犬の交流をとおして命の重み・大切さを描きます。本当の兄弟のように暮らしていたリクとの別れは、少年にとって耐えがたい苦しみだったでしょう。リクと過ごした時間が楽しかったからこそ、苦しみは大きかったことでしょう。
とても悲しいお話ですが、リクとの素敵な思い出は少年にとって人生の糧になったのではないでしょうか。命の儚さや素晴らしさを伝えます。
愛犬家としても有名な作者:坂上 忍氏が、過去に哀しい別れをした愛犬リクへの思いを胸に制作した絵本です。作画はお笑い芸人:くっきー!(野性爆弾)が担当。テレビ・CM・雑誌などで活躍する渡辺 満里奈氏の読み聞かせ音声付きです。