この絵本の内容紹介
「今日は かなしいことが あったなぁ」
一匹のウサギさんは落ち込んだ様子で夜道を歩き、家に帰る途中でした。
そして、夜空に浮かぶ星を見て昔のことを思い出しました。
それはウサギさんが子どもの頃の思い出。学校で塗り絵の宿題が出たときのことです。
「今日の しゅくだいは ぬり絵です。このお花の絵に 色をえらんで ぬってきてください」
先生からの宿題に、みんなは考えを巡らせました。ウサギさんも何色で塗ろうかと考えながら学校を出ました。
ところが簡単には答えが見つかりません。ウサギさんは寄り道をしながら考えることにしました。
そして、寄り道の途中で友達に遭遇しては何色に塗るかを尋ねるのでした。
「いぬさんは 何色にするの?」
町の公園で遭遇した犬さんは赤色と答えました。さっき食べたショートケーキの真っ赤なイチゴがとても美味しかったからです。
「ねこさんは 何色にするの?」
森の入り口で遭遇した猫さんは緑色と答えました。たくさん持っているクレヨンの緑が不思議な色に思えたからです。
「くまさんは 何色にするの?」
海の見える丘で遭遇したクマさんは青色と答えました。毎日見ている海の色を選んだのです。
「どうしよう……。みんなの色は すてきな色。赤もいいな 緑もいいな 青もいいな」
ウサギさんは、みんなの話を聞くうちに答えから遠ざかってしまいました。どれも素敵な色に思えて迷いが大きくなってしまったのです。
そんなとき、ウサギさんは年寄りのカメさんに遭遇しました。そして、塗り絵のことを相談すると深くて不思議な答えが返ってきました。
「何色にするかも 大切だけど その色を えらんだ気もちを わすれないこと」
「その色を えらんだ自分を……すきでいることだね」
ウサギさんにはカメさんの言葉の意味が分かりませんでした。
けれども、その意味を考えながら帰り道を歩いていると……。