この絵本の内容紹介
今日はパパに連れられて仕事場へ行きます。パパはプロレスラーなので、仕事場というのはプロレス会場です。そして、プロレスラーと言っても悪者役で、正義の味方と闘うのがパパの仕事なのです。
僕は見たいような見たくないような、曖昧な気持ちでいました。なぜなら、悪者役のパパは正義の味方にやっつけられてしまうのです。その複雑な心境のまま、プロレスの試合は始まろうとしていました。
赤コーナーに入場するのはチャンピオンのドラゴン・ジョージ。名前を紹介されると大きな拍手が起こります。
一方、青コーナーに入場するのは覆面を被った挑戦者のゴキブリマスク。僕のパパです。名前が紹介されると観客は顔をしかめました。
僕の席の隣は、偶然にも友達のマナちゃんでした。僕とは違ってドラゴン・ジョージを応援しに来たのです。僕がゴキブリマスクを応援するとはとても言えません。
カーンと鐘が鳴り響くと、二人の激しい闘いが始まります。ドラゴン・ジョージがゴキブリマスクをリングから叩き落とすと、マナちゃんは嬉しそうに応援しました。一方、僕は心の中でゴキブリマスクを応援しました。
ゴキブリマスクは、ずるい攻撃でドラゴン・ジョージと闘います。会場の椅子を武器として持ち出したり、ギンバエマスクと協力したり、ありとあらゆる手段を用いて闘うのです。
パパがいつもお風呂でやるポーズで「かつぞ!」と叫ぶと、僕はパパをを応援したい気持ちが一層強くなりました。ところが、観客の反応は僕とは真逆です。ゴキブリマスクが攻めれば攻めるほど怒ってしまうのです。そして、ドラゴンが最後はやり返すのだと信じていました。
ところが、その期待は裏切られました。結果はゴキブリマスクの勝利。必殺技のホイホイドライバーを見事に決めたのです。その瞬間、思わず僕は喜んでしまい……。
この物語は、どんな仕事であっても一生懸命に務めを果たすことが大事なのだと教えてくれます。また、少年の複雑な心境に様々な共感を覚えることでしょう。
悪者役のパパの姿、優しいパパの姿、その対称的な姿から親子の葛藤や愛情を描きます。少年は気持ちの落とし所を見つけることができたのでしょうか。