この絵本の内容紹介あらすじ

のっぽのハッチさんは一人暮らし。毎朝、6時半ぴったりにレンガ造りの家を出ると仕事に向かいます。雨の日も雪の日も遠くの靴紐工場まで歩いて行きます。

お昼になると、ハッチさんは食堂の隅っこでお弁当を食べます。毎日決まって、辛子を塗ったサンドイッチとコーヒーです。たまにはデザートにプルーンを食べることもあります。

ハッチさんは、みんなとお喋りしたり、笑い合ったりすることはありません。

仕事帰りには必ず売店と食料品店に寄ります。売店では新聞を買って、食料品店では晩御飯のおかずに七面鳥の手羽を買うのです。

家に帰って晩御飯を済ませると、シャワーを浴びて寝るだけ。

来る日も来る日も代わり映えのない生活をハッチさんは送るのです。

ところが、二月の土曜日、ハッチさんが玄関の掃除をしていたところ、郵便屋さんが大きな荷物を抱えてやって来ました。

荷物が届くことなど想定外だったハッチさんですが、困惑しながらも受け取ると、さっそく包み紙を破きました。

そして中から出てきたのは、ピンクのリボンが付いた赤くて大きなハート型の箱。その箱をそっと開けてみると中にはチョコレートがたくさん入っていたのです。しかも、「あなたがすきです」と書かれたメッセージカード付き。
この日は、なんとバレンタインデーだったのです。

ハッチさんは誰からのプレゼントなのか首を傾げます。これまで一人ぼっちだったハッチさんにプレゼントをくれるような友達はいなかったからです。

プレゼントをテーブルの上に置くと掃除の続きを始めるハッチさん。ところが、プレゼントのことが気になって掃除どころではありません。

自分のことを好きだと思ってくれる人がいると思うと、ハッチさんは思わず笑みが溢れます。そして、とび跳ねたり、手を叩いたりと嬉しさが込み上げ、チョコレートを一つ食べるのでした。

それからというものハッチさんの生活は好転します。よそ行きのシャツに着替えて、お気に入りのネクタイを締めて、お洒落をしてニコニコと出かけます。すれ違う人に愛想良く挨拶までするので、みんなはびっくり。

最初は驚くばかりですが、段々とハッチさんのまわりには人が集まってくるようになりました。お昼をみんなで食べたり、困っている人の手伝いをしたり、ホームパーティーを開いたり、そんなハッチさんのことをみんなは大好きになったのです。

ところがそんなある日、郵便屋さんが困った顔でハッチさんのもとにやって来ました。なんと、バレンタインデーの贈り物はハッチさんへのプレゼントではなかったのです。郵便屋さんが住所を間違えて届けてしまったのでした。

ハート型の箱やメッセージカードを郵便屋さんに返すと、ハッチさんは落ち込んでしまいました。そして、以前の代わり映えのない生活に逆戻りしてしまうのでした……。


さて、ハッチさんの素敵な日々は終わってしまったのでしょうか。いえいえ、最後は心温まる展開が待っています。

自分のことを好きだと思ってくれる人がいることがどれだけ素敵なことか、そんな当たり前だけれど忘れてしまいがちなことを改めて思い起こさせてくれる絵本です。