この絵本の内容紹介あらすじ

世界は果てしなく大きく、太陽の光で溢れています。そして、チロル君にとっては、自分の生まれた場所こそが世界で一番輝いています。

チロル君の生まれ故郷は山の麓。太陽が昇ると木々や野原を明るく照らし、緑豊かな自然が目の前に広がります。チロル君はリンゴの木に登って、その絶景に向かって「おはよう」と歌います。

この村のリンゴの木々は、先祖代々大切にされてきたもの。赤ちゃんが生まれたり、誰かが結婚したり、お祝い事があるたびに「家族の木」として一本一本増えてきました。そして、チロル君のこれまでの暮らしやこれからの暮らしをリンゴの木は静かに温かく見守ります。

この村の暮らしは季節に合わせて移ろい、美しい山間地域は四季折々の表情を覗かせます。春になると山の雪が溶け出し、花々が山や谷を飾ります。夏になると、人々は牛を連れて歌いながら山を登ります。秋になると収穫祭が開かれ、日が暮れるまで歌ったり踊ったり愉快な一日が訪れます。そして冬になると、雪が降り積もり、真っ白な世界が広がります。


この絵本は、チロル君の山間での暮らしを四季とともに描きます。また、幼馴染みのエーデルとの和やかで甘酸っぱい交流を描きます。

「ぼくが せかいで いちばん すきなところ」というチロル君の言葉は、生まれ故郷のかけがえのなさを実感させます。

現代に生きる私達は便利で効率的な暮らしを求めがちですが、都会的な暮らしは息が詰まるように感じることもあるでしょう。そんなとき、チロル君の暮らす世界のような、決して便利ではなくとも余白のある暮らしに想いを馳せたくなるものです。