この絵本の内容紹介
はるさんは86歳ですが、村で一番若いおばあさんです。そして、この村には10人しか暮らしていません。
村は山間の谷に沿って坂道に張りつくように細長く延びています。
はるさんの家から遥か下に川があり、向かい合うように山が見渡せます。
はるさんの仕事は、小さな畑の世話と裏山に少し植えた果物の木の世話です。
10人しかいない村ですが、昔はもっとたくさんの人が暮らしており、みんな山の仕事をしていました。
学校や病院やお店もあり、村の真ん中には公民館もありました。
みんな生き生きと暮らしていたのに、どこに行ってしまったのでしょうか……。
はるさんの息子達は都会の学校に進学し、そのまま都会で働くようになりました。孫達も大きくなると忙しくなり、ぱたりと来なくなりました。
つねさんやかよさんや他の人達のところも似たり寄ったり。こうして村から人がどんどん減って、とうとう10人になってしまったのです。
おばあさん達はみんな自分の家で暮らしていましたが、一人また一人とはるさんの家に居着くようになり、ついにはみんなで暮らすように。それ以来、おばあさん達はお昼ご飯の後になると、村の今後について話し合うようになりました。
「だれかが とかいに いって 人を よんでこよう」
「でも どうやって」
「えらい人に たのんだら どうだろう」
「こどもづれで すみに きてくれても 学校が ないよ」
「……」
「……」
「…………」
「それより もっともっと さきのことを かんがえよう」
暗い沈黙の後、はるさんの提案で大きな決断をすることになります。
それは、村に桜を植えること。さっそく次の日から作業に取り掛かります。
まずは苗作りから始め、育てた1000本の苗をせっせと植えていき——。