この絵本の内容紹介
ある日、ケンタ君のお爺さんが死んでしまいました。ケンタ君はたくさん泣きましたが、時間が経つにつれて少しずつ少しずつ元気を取り戻していきました。
一方、あの世に旅立ったお爺さんは長い階段を何日も何日も上っていました。そして、ついに雲の上に辿り着きました。
ところが、辿り着いた先は人間の天国ではありません。猫の天国だったのです。雲の上は大勢の猫で溢れています。
「ようこそ おじいさん、ねこの てんごくへ!」
そう話し掛けてきたのは一匹の白い猫。頭の上には輪っかが浮かび、背中には翼が生えています。
その猫が言うには、お爺さんは道を間違えてしまったのです。そして、お爺さんのように道を間違える者がたまにいると言うのです。
「どうします? にんげんのほうに いきますか?」
お爺さんはその猫に尋ねられますが、猫の天国で暮らすことにしました。また別の階段を上るのは、お爺さんにとっては途方もなく大変なことだったのです。
「あんないします! おじいさん、こちらへどうぞ!」
白い猫はそう言って歩き始めますが、観光案内ではありません。仕事の案内なのです。天国にいても働くことは大切なことだったのです。
そうして着いたのは『もようや』と書かれたお店。お爺さんはこのお店で、これから生まれる猫の体に模様を描く仕事をすることになりました。
ところが、このお店に備えられた筆はお爺さんには小さ過ぎます。以前はハツカネズミの家族が働いていたので、小さい筆しか用意されていなかったのです。
猫のお客さんに頼まれて虎模様を描きますが、筆が小さ過ぎて仕事になりません。呆れた猫のお客さんは「もういいです!」と言って、別のお店に行ってしまいました。
そうして次は『かみがたや』と書かれたお店で働くことになりますが、今度は筆が大き過ぎて仕事になりません。以前は、このお店でゾウが働いていたのです。ここでも猫のお客さんに呆れられてしまうのでした。
「なにか、わしにもできる しごとは ないかのう・・・」
その夜、お爺さんは街の灯りを眺めながら落ち込んでいました。そして、白い猫に相談しながら次の仕事を考えていると、『ちょびヒゲや』というお店を開くことに。お爺さんは孫のケンタ君にちょび髭を褒められたことを思い出すと、白い猫のアイデアで、猫にちょびヒゲを描くことになったのです。
この意外なアイデアは、猫の天国でちょび髭ブームを巻き起こし……。
お爺さんが猫の天国に間違えて辿り着くという展開や天国でも仕事をするという展開、猫に模様を描く仕事に就くという展開、どこの場面を切り取ってもユーモアに溢れています。お爺さんが天国に旅立つという物語なのに、ついつい笑いが込み上げます。
お爺さんが巻き起こすちょび髭ブームは、意外な形でケンタ君のもとに届き、最後は心温まります。