この絵本の内容紹介
餅というのは大変なもので、気づいた頃には何度も何度も頭を叩かれています。それから、棒でぺったんこに伸ばされ、ぷっちんと千切られてしまうのです。
悲惨なのはここからで、千切られた餅達は、餡子やきな粉をまぶされたり、大根のおろし漬けにされたり、ねばねばの納豆に混ぜられてしまいます。そのうえで、人間にペロリと食べられてしまうのです。
幸いなのは鏡餅で、他の餅達とは違って床の間に大事に飾られます。それでもいつ食べられてしまうのか分かりません。その恐怖がいつまでも付き纏います。
そうなる前に、外へ逃げ出した鏡餅がいました。ペッタンペッタンと音を立てながらタコのように足を伸ばして走ります。
そうして遠くまで逃げると鏡餅でも疲れます。人間と同じように疲れるとお腹が空くのです。鏡餅は人間が美味しそうに餅を食べていたのを思い出すと、自分で自分の体の餅を食べ始め……。
鏡餅の一人称視点で描いた絵本です。餅の気持ちを想像すると、なんとも奇想天外な物語に仕上がります。最後の展開には思わず驚いてしまうことでしょう。
餅に同情してしまうようなお話ですが、その美味しそうな餅を見ていると、薄情なことにお腹が鳴ってしまいます。