この絵本の内容紹介
子どもは知らないことばかりなので、知らなくても恥ずかしいことはありません。ところが、大人になると知らないことは恥ずかしいこと。そうなってしまうので、知ったかぶりをしたり、テキトウなことを言って誤魔化したりしてしまうのです。
ある日、医者の玄庵先生がお寺にやってきました。和尚さんがお腹の具合が悪いというので訪ねてきたのです。
玄庵先生から「転失気(てんしき)はありますか?」と尋ねられますが、和尚さんは『転失気』が何なのかまったく見当がつきません。そこで、「いえ、てんしきは、ありません」と知ったかぶりをしてテキトウに誤魔化してしまいます。
和尚さんは、玄庵先生が帰ってからも『転失気』が何なのか気になって仕方がありません。小坊主の珍念(ちんねん)を呼び、「お前、てんしきをしっておるか」と試すように尋ねました。
珍念も『転失気』が何のことだか見当がつきません。そこで、和尚さんに尋ね返すのですが、「お前におしえたではないか。わすれおって、外でかりてきなさい」と叱られてしまいます。何でも和尚さんに聞けば良いものではない、自分で調べて覚えなさいと言うのです。
和尚さんに叱られた珍念は門前の花屋に向かいます。そして、花屋の店主に『転失気』を貸して欲しいとお願いするのでした。
花屋の店主が「おおきいのかい、ちいさいのかい」と尋ねてきますが、どうやら風呂敷と勘違いしているようです。珍念が『転失気』だと改めて伝えると、「・・・ちょっとまってな」と言って店の奥へと入っていきました。
『転失気』が何なのかが分からない花屋の店主は、店の奥で女将さんに尋ねることにしたのです。ところが花屋の女将さんも『転失気』が何なのか見当もつきません。そこで花屋の店主は、友達に譲ってしまったとテキトウなことを言って誤魔化すのでした。
『転失気』を借りるため、次は石屋に向かう珍念。石屋に着くと、店主に『転失気』を貸して欲しいとお願いしました。
石屋の店主が「四角いのかい、丸いのかい」と尋ねてきますが、どうやら鍋敷と勘違いしているようです。珍念が『転失気』だと改めて伝えると、「・・・ちょっとまってな」と言って店の奥へと入っていきました。
『転失気』が何なのかが分からない石屋の店主は、店の奥で女将さんに尋ねることにしたのです。ところが石屋の女将さんも『転失気』が何なのか見当もつきません。そこで石屋の店主は、味噌汁に入れて食べてしまったとテキトウなことを言って誤魔化すのでした。
花屋でも石屋でも『転失気』を借りられなかった珍念は、諦めて寺に帰ってきました。すると、玄庵先生のところに薬を取りに行くついでに聞いてくるようにと和尚さんが言いました。
誰に聞いても分からない『転失気』とは、一体何なのでしょう。玄庵先生に尋ねると『転失気』の意外な正体が判明します。
『転失気』の意味を知ると、今度は和尚さんを試すことにした珍念。知ったかぶりがバレた和尚さんが捻り出した言葉とは……。和尚さんの最後のオチが何とも面白い、落語ならではの楽しいお話です。
大人は特に、自分自身でも身の回りの人でも『知ったかぶり』をしてしまう人は多いのではないでしょうか。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」と言いますが、まさにその言葉を体現したような絵本です。
『知ったかぶり』をして損する大人にならないためにも、このお話を読んでみてはいかがでしょう。子どもはもちろん大人にも響くお話です。