この絵本の内容紹介あらすじ

さっちゃんのお母さんのお腹には赤ちゃんがいます。なので、さっちゃんはもうすぐお姉さんになります。お母さんのお腹を撫でながら、自分もお母さんになりたいと思いました。

と言っても、さっちゃんがなりたいのは、幼稚園のおままごと遊びのお母さんです。お母さんになって、おやつを配ったり、赤ちゃんにミルクを飲ませたりしたかったのです。

さっちゃんが通う幼稚園のすみれ組では、おままごと遊びが流行っています。大きな箱の中には、おままごとの道具が目一杯詰まっています。暴れん坊のあきら君までおままごとに夢中になって、お父さん役をすると大活躍。

ところが、お母さん役はいつも決まって、背の高いみよちゃんかまりちゃんばかり。さっちゃんはちびの妹か赤ちゃん役になってしまうのです。

一度でいいから長いスカートを履いて、エプロンを着て、お母さん役になりたい。それがさっちゃんのささやかな願いでした。

幼稚園のけいこ先生が「きょうのおかあさんは だれですか?」と子どもたちに訊ねたとき、さっちゃんは自ら立候補しました。それから我先にと、さっちゃんは大きな箱からエプロンを引っ張り出しますが……。

「さっちゃんは おかあさんには なれないよ! だって、てのないおかあさんなんて へんだもん。」

お母さん役をやりたいまりちゃんは、さっちゃんと口論になると顔を真っ赤にしながら言いました。

そして、まわりの友達も「そうよ!へんだよ!」と言って、さっちゃんがお母さん役になることを反対します。あきら君も「おれ、おとーさん やーめた」と言って、さっちゃんのお母さん役を反対しました。

どうしてもお母さん役をやりたいさっちゃんは、エプロンを握りしめたまま、まりちゃんに飛びかかります。そして、取っ組み合いの喧嘩になってしまいました。

それをけいこ先生が慌てて止めに入ると、さっちゃんはエプロンをまりちゃんに投げつけ、部屋の外へ飛び出してしまいました。

さっちゃんは先天性四肢欠損という障がいを負って生まれ、右手には指がありません。みんなと違うことに傷つき、幼稚園に行けなくなってしまいます。

さっちゃんの心の傷の原因は、おままごとでお母さん役ができなかったことだけではありません。現実を受け止められなかったり、本当のお母さんになれないのではないかという不安が押し寄せたからでもあるのです。

何日も幼稚園に行けなくなったさっちゃんは、無事に立ち直ることができるのでしょうか。


現実を受け止められないさっちゃんの、心の葛藤を描いた絵本です。さっちゃんが力強く歩き始めるまでの物語に、ほんのり温かくて優しい気持ちになります。