この絵本の内容紹介あらすじ

戦争はどんな国の言葉も話せます。そして、戦争はなんでも出来ると思っています。戦争は自らを正当化することすらできるのでしょうか。

雨の季節の準備をするカエル達は戦争を知りません。戦争が姿を隠して近づいてくると、息つく間もなくペチャンコにされてしまいます。

カエル達を踏み潰したのは、戦争を運ぶ巨大なタイヤ。その姿を見る間もなく、理不尽に踏み潰されてしまうのです。

戦争も自分の考えを持っています。しかしながら、自分が襲おうとしているのが誰なのか、それすら知ろうとしません。

ロバと男の子のところにも戦争はやってきます。このロバも男の子も危険が迫っているなど知る由もありません。考えるのは楽しみな夕食のこと。そんなとき、車みたいに大きな物が頭の上に落ちてくるのです。

戦争は自分達の都合でしか物事を見ようとはしません。油やガスや地中にある物を、自分達の都合で見るのです。

子育て中の母親達のところにも戦争はやってきます。ミルクの大切さ、ましてや人間の大切さを戦争は見つめることができません。

母親と赤ん坊が大切なひとときを過ごしているときでさえ、戦争は近づいてきます。大地そっくりの迷彩服を着た戦争は、険しい丘を登って着実に近づいているのです。

戦争はどんなに経験を積んでも賢くなりません。自分の物でなければ平気で破壊してしまうのです。それが古代の文明であろうと平気で壊してしまいます。

戦争は散布剤で森や命を枯らし、町々も飲み尽くします。人が集まるところでは、大きなミサイルで穴を開け、地下水を汚し、井戸水も汚すのです。

絵本「なぜ戦争はよくないか」の一コマ
絵本「なぜ戦争はよくないか」の一コマ2

戦争は酷い味や嫌な臭いを残します。思いもよらない副作用をもたらすのです。戦争の染み込んだ水は、一口飲むごとにみんなを病気にしてしまいます。だからと言って、水を飲まなければ、それはそれで死んでしまいます。鼻をつまんで息をしなければ、それもそれで死んでしまいます。

このような現実が世界に広がっています。そして、戦争の染み込んだ水を飲まなければならない日が、いつか訪れるかもしれません。戦争が正しいと言うのであれば、自分のもとへ、大切な人のもとへ、その日は訪れるのです。


この絵本の著者:アリス・ウォーカーは、小説『カラー・パープル』で差別の構図や強く生きる黒人女性の姿を描き、社会に深く問いかけました。

その著者が衝撃を受けたのが、2001年9月11日のテロ攻撃に対してアメリカが行った報復の現実。そして、手掛けたのがこの絵本『なぜ戦争はよくないか』です。

戦争は国が起こすのでしょうか。偉い人達が起こすのでしょうか。その一面も少なからずあることでしょう。ところが、この絵本の主語は戦争。すべてを誰かの責任にすることはできないのかもしれません。私達一人一人の意識も戦争を起こしているのかもしれません。逆にそう考えると、私達の意識次第で戦争を止めることができるはずです。