この絵本の内容紹介あらすじ

この話は、イギリスの代表的な民話として知られています。しかし、イギリス固有の物語ではなく、カナダ、オーストラリア、アメリカにもひろがっているし、同型の話はスカンジナビア、バルト諸国、ロシア、チェコスロバキアなどヨーロッパ諸国でも語られています。

この本では、勇気あるジャックが豆の木をよじのぼり運だめしをする冒険物語としてまとめてみました。この話がおもしろいのは、ジャックが人食い鬼の城から、金貨や金の卵をうむにわとりなどをぬすみだす、スリルとサスペンスに満ちた部分にあると思ったからです。

というのも、ジャックの父親が人食い鬼に殺されたので、そのかたきうちをしたのだという伝承もあるからです。おそらくその話は、勇猛なノルマン人の侵略を受けて生活をおびやかされていた10世紀ごろのスコットランド人の心情を反映したのに違いありません。ノルマン人――人食い鬼が身体ばかり大きくても知恵が足りないおろか者と表現することによって、ささやかな抵抗をしたのでしょう。民話が、土地土地で独特のニュアンスをもって語られるよい例といえそうです。

さて、ここにも登場する妖精といえば、ヨーロッパの民話の人気ものです。イギリスでは、<民話>(フォーク・テイル)と<妖精の話>(フェアリ・テイル)が同じように使われていることからもわかります。イギリスの妖精は、他の国の妖精がよくばりでみにくい顔をした男の小人が多いのに対し、酒をのんだりおどったりするのが大好きで、良心がなく、きまぐれです。そして魔法の力で、きげんのよいときは人間を助けますが、悪いいたずらをします。ときには、美しい女の人や上品なおばあさんになったりして、人間の好意に対し素直にお礼をしてくれたりもするのです。

「ジャックとまめのき」では、ジャックが大切な牛を豆ととりかえたかわりに、彼が幸運をつかむ手助けをしてくれました。