この絵本の内容紹介あらすじ

「ブレーメンのおんがくたい」は、〈童話の世界的宝庫〉といわれるグリム兄弟の『子どもと家庭のための童話』の中に収められています。

グリム兄弟については、すでに「ヘンゼルとグレーテル」(第2巻)の解説中に記述してありますが、50年にわたる収集の結果、ふたりの名は不朽のものとなりました。しかし、童話が初めて世に出た時は、かなり酷評され、非難されたのです。むかし話採集の意義が理解されていなかったり、グリム弟が文学的表現を加えたことに対して、それが〈むかし話の本来の姿を変えた〉と評されたためでした。でもふたりは、地道に努力を重ね、ついにこの大偉業を成し遂げたのです。

この話のタイトルに使われている〈ブレーメン市〉は、ドイツのウェーゼル川下流にある古い港町です。話の内容には直接関係ありませんが、この童話を記念して市には現在、動物たちの碑が建てられています。

さて「ブレーメンのおんがくたい」に登場する動物たちは、それぞれ自分の特性を発揮して活躍します。そのため、これに類似したむかし話として、日本の「さるかに合戦」が、よく引き合いに出されます。しかし、「さるかに合戦」では、その主題を〈敵討〉においてあることから、内容的にやや暗い感じがしないでもありません。それに比較すると、「ブレーメンのおんがくたい」に登場する動物達には〈天性の快活さと、すさまじいまでの生命力〉を感じます。とかく人というものは勝手なもので、相手が役に立つうちは愛想よく振舞うけれども、そうでなくなると手の裏をかえすように邪険になるようです。明らかに、このような人間の犠牲になった動物達がこれを克服して幸福を得る筋立てには、心から拍手を送りたい気持ちになるのです。